その名の通り、厳しい寒さを思わせる名前の国アイスランドには、屋根が芝生に覆われた家 Laufás(ロイヴァゥス)があります。
まるでファンタジー映画に出てきそうな雰囲気の家は、アイスランド北部に伝わる伝統的な家屋で、アイスランドならではの生活の知恵から生み出されました。
ロイヴァゥスってどんな家?
国の一部が北極圏にかかる寒冷な気候のアイスランドには、長年に渡り人々の住居となってきた伝統的な家屋「ロイヴァゥス(Laufás)」があります。
一体どのような家なのでしょうか?特徴を見てみましょう。
芝生に覆われたロイヴァゥス
屋根一面に芝生が敷き詰められているロイヴァゥスは、まるでおとぎ話に出てきそうな雰囲気です。
雪解けの季節には、地面の芝生の緑に溶け込んで、芝生に埋もれているかのようにも見えます。
芝生に覆われた屋根は、一見日本の茅葺(かやぶき)屋根を彷彿とさせますね。
どんな風に作られているのか?
厳しい寒さが続くアイスランドの長い冬の間はもちろん、寒冷な気候の国土では住宅を作るための木々が育ちにくい環境にあります。
そこで、アイスランドに暮らす人々が知恵をしぼり、流木や芝生、苔、石を家屋の建築資材として利用するようになったのです。
ロイヴァゥスに使われる資材を見ることでその家の経済状況がわかります。
牧師など、裕福な家の床には木材が多く使われ、一般庶民の家の床には土が多く使われていました。
作り方も非常にシンプルで、屋根の土台には北欧に自生する白樺などの木の樹皮を使います。
その樹皮の上に土をかぶせ、芝生を植えていくのです。
室内の構造的は日本の古墳時代にあった竪穴式住居に似ています。
屋根を芝生にすることでどんな効果があるの?
ファンタジーの世界観の自然風景に溶け込むようなロイヴァゥスは、その特徴的な外観が印象に残ります。
しかし、屋根に芝生や土が使われているのは、決して資材でる木々が育ちにくいことだけが理由ではありません。
ロイヴァゥスの伝統的な作りには厳しいアイスランドの寒さを生き抜くことが考慮され、そのための知恵が詰め込まれています。
それは、断熱材としての効果。
ロイヴァゥスの屋根を覆う土と芝生は、天然の断熱材として活躍します。
芝生と土が冷気の通り道を遮断し、凍てつく冬でも家の中を暖かく保ってくれるのです。
そう聞くと夏は通気性が悪く暑いのではないかと思うかもしれませんが、実はそうではありません。
植物の蒸散作用によって室内の熱が外に逃がされ、涼しく快適に過ごすことができます。
どこに行けば見られる?
ロイヴァゥスは現存していますが、今ではロイヴァゥスに住む人はほとんどいません。
一部、倉庫として現在も使われているロイヴァゥスがあるものの、そのほとんどが歴史の移り変わりの経緯を物語るものとなっています。
今でも残るロイヴァゥスはどこで見られるのでしょうか。
エイヤフィヨルズル沿岸地帯
現在でもロイヴァゥスが見られる場所の一つが、アイスランド北西部のエイヤフィヨルズル沿岸エリアです。
首都レイキャビクからは遠く、フィヨルド沿いを旅したい人には向いていますが、行きにくい場所なのが難点です。
アイスランド最長のフィヨルドであるエイヤフィヨルズルを見に行く予定があれば、立ち寄りやすいでしょう。
現在では鉄筋コンクリート製の住宅がアイスランドでも一般的になっており、現存しているロイヴァゥスは大昔に建てられたものです。
ロイヴァゥスはすでに歴史の産物であり、新しく建てられることはありませんが、当時の生活様式を垣間見ることができる点でも、歴史的価値の高いものとなっています。
スコゥガル民族博物館
アイスランド南部のスコゥガルという町にある、「スコゥガル民族博物館」という野外博物館でもロイヴァゥスを見ることができます。
スコゥガルは、アイスランドの首都レイキャビクから南東に約150kmの場所にあり、車で2〜3時間ほどの距離なので、レイキャビクを訪れる観光客にも人気のスポットです。
この博物館では、当時のままのロイヴァゥスの他、かつてのアイスランド人の暮らしぶりがわかる展示を見ることができます。
3つの博物館と6つの歴史的建造物からなる博物館で、見どころが多いのも人気の理由です。
Skógar Museum
住所:Safnavegur 1, 861 Skógar, アイスランド
営業時間:10時00分~17時00分
公式サイト:https://www.skogasafn.is/
アゥルバイル野外民族博物館
アゥルバイル野外民族博物館は、アイスランドの首都レイキャビクから約8kmほど離れた場所にある野外博物館で、ここでもロイヴァゥスが見られます。
敷地内には、古い教会や漁師の家、農場跡、民家などが20軒ほど立ち並び、当時のアイスランドの雰囲気を味わうことができます。
建物のほとんどは19世紀から20世紀の初めにかけてレイキャビクの市街地に建てられたもので、まるでタイムスリップしたような気分になれます。
アゥルバイル野外民族博物館で見られるロイヴァゥスは、1842年にアイスランド北部のスカーガフィヨルズルの近くに建てられた教会で、1960~61年にかけてアゥルバイル野外民族博物館に再建されたものです。
教会の中に入ることもできるので、ロイヴァゥスの内部も見ることができます。
住所:4, 110, Kistuhylur, Reykjavík, アイスランド
営業時間:13時00分~17時00分
公式サイト:https://reykjavikcitymuseum.is/arbaer-open-air-museum
ホフスキルキャ教会
(出典:icelandmag.is)
アイスランドの首都レイキャビクから、南岸沿いを東へ340kmほど離れた場所にある小さな村ホフには、最期のロイヴァゥスと言われる古い教会ホフスキルキャ教会が残っています。
この教会は1884年に建てられたもので、これを最後に技術の進化によってロイヴァゥスの歴史が幕を閉じたと言われています。
厳しい気候に耐えられるよう壁は厚く作られており、断熱材には岩が使われている頑強な作りになっています。
レイキャビクから遠い場所にありながら、ロイヴァゥスの屋根の芝生が周囲の自然に溶け込み、四季折々の風景を楽しめる場所として人気です。
Hofskirkja
住所:Norðausturvegur, 785 アイスランド
公式サイト:https://guidetoiceland.is/
ヴィージミーリ
アイスランド北西部に位置するヴィージミーリでもロイヴァゥスの教会が見られます。
ヴィージミーリはレイキャビクから北東へ約300kmほど行ったところにあり、かなり遠いですが、一見の価値のある場所です。
ヴィージミーリから100kmほどのところにはアイスランド北西部の中心地アークレイリという町があり、レイキャビクとは全く違った雰囲気を感じることができます。
ヴィージミーリのある北西部のスカガフィヨルズル地域はアイスランド民族文化史における揺籃の地としても知られ、多くの古い建物が美しい状態で保存されていることでも知られます。
ヴィージミーリ教会は1834年に建てられたもので、アイスランドがキリスト教に改宗した1000年頃にはすでに教会があったと言われています。
ヴィージミーリ教会はアイスランドで歴史的建造物として保存されている6つの教会の一つで、現在も芝生が丁寧に手入れされています。
Víðimýrarkirkja
住所:GGQH+GVP, GGQH+FF, 561 Varmahlíð, アイスランド
営業時間:12時00分~18時00分
まとめ
ところ変われば住む家も変わります。
日本で暮らしていると想像もつかないような気候の厳しさがアイスランドの人々に知恵を与え、ロイヴァゥスが生まれました。
自然と共存するアイデアが詰まったロイヴァゥスは、現在世界が直面している環境問題にもやさしそうです。
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