スウェーデン 北欧コラム

【NATO加盟へ】スウェーデンは中立国なの?ロシアとの関係も解説

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美しい自然と、モダンでおしゃれなデザインがあふれる平和な場所。
北欧の国々にそんなイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。

中でも、スウェーデンは平和主義国家として知られています。

その理由は、近代史を見る限り、世界でも最も長い間戦争をしていない事実があるからに他なりません。

しかし、2022年2月におこったロシアのウクライナ侵攻を受け、スウェーデンの状況が大きく変化しています

Asuta
今回は、スウェーデンの戦いにおける歴史と、今後の動向を見ていきましょう。

そもそも中立国とは

(出典:visitsweden.com

中立国というと、永世中立国としてスイスが有名です。
そもそも中立国とは一体どのような国の状態を指すのでしょう。

中立国とは、国民皆兵、徴兵制度によって軍事力を持つことで国家防衛を図り、個別的自衛権のみを保持します
自国は周辺国と中立条約を結ぶことで、その中立を保障、承認されている国を指します

現在周辺国に承認されている永世中立国は、スイス、オーストリア、トルクメニスタンの3国

その他にも、ラオスやカンボジア、モルドバ、リヒテンシュタイン、コスタリカも永世中立を宣言していますが、承認には至っていません。

スウェーデンは中立国の条件である条約等を結ばず、国家の対外政策として中立政策を実施してきました。
欧州の集団防衛を担うNATOとは、距離を置いていたのです。

スウェーデンが中立を意識する理由

スウェーデンは、1815年以来、200年以上戦争をしていないことで知られている国です。

しかし、スウェーデンは脅威であるロシアによって常に平和を脅かされていることもあり、自国の防衛意識を高めざるを得ない立地であることも、中立を意識する理由でしょう。

対ロシアでは、近年潜水艦や戦艦によるスウェーデン領海への接近、侵入が度々起こっています。

仮想敵国であるロシアに対する防衛は、パートナーシップを結ぶNATO全体としての防衛課題であると同時に、スウェーデンにとっては切迫した問題となっていました。

この度重なる脅威により、スウェーデンでは、2020年10月14日に新国防法案が提出されました。
ヨーロッパにおけるロシアの脅威が日に日に増し、スウェーデン人の警戒心が高まっていることもあり、過去70年間で最大の軍拡を宣言しています。

また、2022年にスウェーデンはフィンランドとともにNATOへの加盟を申請しました。
フィンランドは2023年4月、トルコ議会の承認を経てNATOへの加盟を果たしました

スウェーデンのNATO加盟は、スウェーデン内でのクルド人問題やイスラーム嫌悪にどのように対応していくかが鍵となっています。

世界大戦でのスウェーデンの立ち位置

近世までは軍事国家であり、ヨーロッパの中でも列強国であったスウェーデンは、17世紀から18世紀初頭にかけては軍事技術をリードする強国でした。

18世紀の大北方戦争ではロシア帝国などに敗北し、以降スウェーデンは自国の防衛に専念するようになっています。

その後のナポレオン戦争ではフィンランドを失い、終戦後に成立した現在のベルナドッテ王朝以降、ヨーロッパの戦争に関与することなく、武装中立(中立主義)を掲げ、現在に至ります。

第一次世界大戦におけるスウェーデン

北欧の強国でありながら国防に力を入れていたスウェーデンは、第一次世界大戦では連合国側からも、同盟国側からも、どちらの側について参戦するかが危惧・警戒されましたが、それを払拭するため、厳正中立の外交方針を明言しています

1916年には、バルト海と北海を結ぶウーレスンド海峡の機雷封鎖要求を受け、ドイツによってコーグルンスレンナンに機雷を敷設されるなどし、スウェーデンの中立は常に脅かされました。

この時に敷設した機雷が、現在でもスウェーデン沿岸部で発見され、爆破処理される事例が頻発しており、第一次第二次両大戦中にバルト海に敷設された機雷は16万発以上にものぼると言われています。

第二次世界大戦でも自国を守ることに徹したスウェーデン

第二次世界大戦でも、1940年にドイツからの要求により、ノルウェーから非武装のドイツ兵のスウェーデン領内通過を認めざるを得ない事態になりました。

1941年に独ソ戦が始まると、さらなるドイツ側の要求により、武装したドイツ兵をノルウェー国境からフィンランドまでスウェーデン国鉄の列車で輸送することを余儀なくされています。

このように、スウェーデンの中立は世界大戦と周辺国により脅かされ続けていましたが、譲歩ばかりしていたわけではありませんでした。
フィンランドへの義勇兵派遣や、ノルウェーの兵士への軍事教練を施すなど、間接的に世界大戦に関与していたのです

さらに1940年、ドイツがデンマークとノルウェーに侵攻すると、スウェーデン各地でドイツ軍機の領空侵犯が発生するようになりましたが、強制着陸や撃墜といった措置を取るなど、武力行使をしてまでも自国を守る姿勢は毅然と保っていました。

あくまで中立主義を保っていたスウェーデンでしたが、1944年2月、首都ストックホルムと近郊の町ストレングネス、スーデルテリエがソ連の爆撃機によって突然空襲される事件も起きました。

ソ連は誤爆だと主張しているものの、スウェーデンにとってソ連が最大の脅威であることを自覚させる事件となったのです。

戦後~現代のスウェーデンの体勢とは

第二次世界大戦が終結しても、スウェーデンにとってソ連の脅威は続いていくことになります。

終戦後最初に突き付けられた難題は、スウェーデンが受け入れたバルト三国からの難民のうち、ドイツ側に立って戦った兵士やバルト三国のソ連占領時にスウェーデンへ亡命した者をソ連に引き渡すことを要求されたことでした。

ソ連の主張は、東部戦線でドイツ側に立って戦った戦闘員はドイツ降伏によって引き渡されることで合意していることを理由に、その身柄をソ連に引き渡すというもの。
悩んだ末、最終的にスウェーデンはこの要求を飲むことになったのです。

スウェーデンは、冷戦時代にも中立主義を貫きましたが、冷戦後、ソ連の脅威が弱まったことと、1994年のNATOの「平和のためのパートナーシップ」、1995年のEU(欧州連合)への加盟もあり、2010年には徴兵制も廃止し、完全ではないものの事実上中立を放棄しています

21世紀のスウェーデン

(出典:visitsweden.com

ソ連崩壊後、脅威は弱まったと思われましたが、スウェーデンには基本理念として中立主義があり、自国を守ることに重きを置いていることからも、2018年には再び徴兵制が復活

2018年には、スウェーデン政府の緊急事態庁から戦争への備えに関する手引きが国内480万世帯に配られました。
スウェーデン人の防衛意識や非常事態時の対応の知識が高められていた中、2022年2月に起こったロシアによるウクライナ侵攻を受け、隣国フィンランドとともにNATO加盟を申請しました。

またウクライナに武器を提供したことで、中立を放棄したと言えるでしょう。

まとめ

平和で美しいイメージのスウェーデン。

その裏には、脅威にさらされ続けた歴史と、地政学的なリスクから自国を守るという信念がありました。

Asuta
長い歴史からの学びから生まれる防衛意識の高さは、とても現実的なものと言えるでしょう。

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