このお祭りは、フィンランド語ではEukonkanto、英語ではWife Carryingの名称で知られています。
フィンランド東部、湖水地方のソンカヤルヴィという村で開催されるこの競技には、毎年各国から参加者が集い、めいっぱい楽しみながらも真剣に順位を競い合います。
2015年には日本からの参加もありました。
この記事では、遊び心と真剣さがミックスされたユニークな競技大会、奥様運び世界選手権をご紹介します。
奥様運び世界選手権とは
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奥様運び世界選手権は、その名の通り夫が奥様を担いでゴールを目指すレースです。
夫役の男性が妻役の女性を担いで253.5メートルのコースを走り抜けます。
コースの途中には丸太や岩場などの陸上障害物と、水深1メートルほどのプールがあります。
夫役の男性は、妻役の女性が落ちたり水を被ったりしないよう注意しながら障害物を突破しなければなりません。
担がれている女性も、振り落とされないようしっかりと男性にしがみついている必要があります。
毎年各地から参加者が集いますが、実際はほぼフィンランドと隣国エストニアの優勝争いの場となっています。
その証拠に、歴代優勝者を国別に見ると、エストニアからの参加者は11回連続、フィンランドの参加者は7回連続で優勝しています。
ロシアとリトアニアからの参加者が優勝した回もありますが、フィンランドとエストニアに比べると差は歴然としています。
このユニークな競技は1992年から開催されていますが、その由来については諸説あります。
19世紀、その地方の悪党だったロイカンネンという男が、意中の女性を肩に担いで連れ去ったことに由来するという説や、ロイカンネンの一味が盗賊の訓練として重いものを背中に乗せて運んでいたことに由来するという説。
真相は不明ですが、いまでは夏のフィンランドを楽しむお祭りとして愛されています。
その人気は世界中に広がり、フィンランド以外でもオーストラリアやイギリス、アメリカ、香港などで開催されています。
奥様運び世界選手権のルール
奥様運び世界選手権のルールはシンプルで、「妻役の女性を担いで障害物レーンを走り抜くこと」のみです。
服装についてのルールは2つあります。
服装のルール
1つは、妻役の女性の体を固定できるのは夫役の男性が普段使用しているベルトのみだということです。
2つめは、女性はヘルメットを着用することがルールとして定められています。
女性の担ぎ方については「地面についてはいけない」以外の決まりはありません。腕に抱えたり背負ったりと、各自が負担のない方法で担いでいます。
近年では、エストニアスタイルという担ぎ方が主流です。
これは女性が男性の肩に足を乗せ、逆さまになった状態で男性の背中側から胴を掴むというスタイルです。
男性は女性の両足を肩に担ぎ、しっかりと掴みながらレーンを走ります。
この担ぎ方で連続優勝を果たしたエストニア参加者の競技スタイルからエストニアスタイルの名がつけられ、人気となりました。
競技レーンの途中には丸太や岩場などの障害物や、プールが設置されています。
男性は速くレーンを駆け抜けるだけでなく、女性を落としたり頭を打ちつけたり、水を大きく被ったりしないよう注意しなければなりません。
妻役の女性はヘルメットを被る義務がありますが、それでも頭を強く打ったりしてしまうと怪我をするかもしれません。
ココに注意
もし途中で女性を落としてしまうと、ペナルティとしてゴール時のタイムに15秒加算されます。
そして奥様運び世界選手権の最大のルールは「とにかく皆で楽しむこと」。
レースの参加者だけでなく、観戦者も会場全体が一体となって競技を楽しみます。
優勝を狙う参加者たちは真剣ですが、同時にユーモアも欠かせません。
速さで競うのではなく、変わったコスチュームやパフォーマンスを披露して会場を盛り上げる参加者もいます。
奥様運び世界選手権の優勝賞品
奥様運び世界選手権の優勝賞品は、担いだ女性の体重と同じ重さのビールです。
ビール好きのフィンランドらしい賞品といえますね。
女性の体重が軽い方がレースには有利ですが、賞品のビールをたくさん貰いたければ重い方が得ですから、どちらを取るか悩みどころです。
2位、3位の参加者にはフィンランドがデザインされた賞品が授与されます。
奥様運び世界選手権では、レースの勝敗だけでなく各自工夫をこらしたパフォーマンスも見どころです。
一番早くゴールすることが優勝の条件ではありますが、パフォーマンスが評価された参加者にはエンターテイメント賞やベストコスチューム賞を授与され、スポンサー企業から特別賞が贈られます。
奥様運び世界選手権では「めいっぱい楽しむこと」がルールとされています。
速さを競うだけでなくパフォーマンスを楽しんだり、会場を盛り上げたりする参加者に特別賞が贈られるのも納得です。
奥様運び世界選手権の参加方法
奥様運び世界選手権に参加するには、3つの条件があります。
1つめの条件は、男女ペアで参加することです。
本来は夫婦であることが望ましいようですが、必ずしも夫婦でなければならないというわけではありません。
友人や知人同士でも参加できます。
2つめの条件は、妻役の女性の体重が49kg以上であること。
規定の体重に満たない場合は重りの入ったリュックを背負い、49kgまで重さを引き上げます。
3つめの条件は、女性の年齢が17歳以上であることです。
奥様運び世界選手権のメインの競技は全長253.5メートルのレーンを駆け抜けるというものですが、他の競技も開催されます。
40歳以上の参加者が出場するシニア部門や、100メートルの短距離部門、1人の女性を3人の男性がリレー形式で運ぶ団体戦が行われています。
奥様運び世界選手権の参加費は50ユーロで、保険は各自で加入します。
参加希望者は公式ホームページからエントリーを受け付けています。
予選や参加者数の上限はなく、上記の条件を満たせば参加できます。
競技を観戦したい場合は、当日会場に行って15ユーロのチケットを購入します。
会場内の市場には無料で入場できますよ。
奥様運び世界選手権の会場、ソンカヤルヴィは鉄道駅のない小さな村です。
当日はレース本番だけでなく、露店でのグッズ販売や野外ステージのコンサートが開かれるなど、村をあげて盛り上がります。
まとめ
フィンランドの夏は6月から8月中旬ごろまでと、日本と比べて短いです。
毎年7月に開かれる奥様運び世界選手権は、そんな短い夏をめいっぱい謳歌するために、フィンランドでは欠かせない行事です。
真剣さと熱意、そしてユーモアのこもった奥様運び世界選手権は、「皆が一緒に楽しむこと」が最大のルール。
現地で観戦すれば、フィンランド人と共に夏の楽しみを味わえる貴重な機会となるでしょう。
7月にフィンランドを訪れる際は、奥様運び世界選手権の観戦を検討してみてはいかがでしょうか。