北欧の人々にとって、クリスマスは一年の中でも特別な時間です。
12月になると街中がきらびやかなクリスマスカラーに染まり、至る所でクリスマスマーケットが開催されるようになります。
サンタクロースが住んでいると言われているのも、北欧の国フィンランド。
北欧の国々には、独自のクリスマス文化が根づいているようです。
そこで今回は、北欧のクリスマスについてご紹介します。
北欧におけるクリスマスとはどんなイベント?
北欧では、クリスマスはミサに出かけたり、家で家族で過ごすのが一般的。
国によっては、日本のお正月のように親戚が集まって過ごすこともあります。
家族とクリスマスを過ごすのは、他のヨーロッパの国々やアメリカでも一般的です。
日本では、恋人と過ごす人も多いでしょう。
しかし、北欧のクリスマスは、アメリカや日本とは少し違うようです。
北欧のクリスマスは「ユール」が起源
クリスマスのルーツには諸説ありますが、最も有力だとされる説がゲルマン人による冬至祭。
このお祭りはユールと呼ばれ、日照時間が長くなり始める冬至を太陽が復活する日とし、1年の始まりを意味します。
太陽が戻ることを祝福し、悪霊をなだめるために「ユールログ」と呼ばれる大きな薪を燃やします。
その周りを家族で囲み、厳しい冬を乗り越えるために蓄えた食糧でごちそうを楽しむイベントです。
とても神聖なお祭りで、12日間かけて宴が行われていました。
元々ユールとクリスマスは別のイベントで、キリスト教が北欧諸国に定着する前からあったものです。
やがてキリスト教の普及とともにユールが現在のクリスマスのように変化していきました。
また、冬至は現在のサンタクロースはなく、ユール・トムテやユール・ニッセと呼ばれる妖精がサンタクロースのような存在だったのです。
サンタクロースのモデルは3~4世紀頃に実在したキリスト教の司祭である聖ニコラウスだと言われ、ユールがキリスト教の影響を受けるとともに、サンタクロースの存在も普及したと言われています。
このような背景から、北欧では今でもクリスマスをユールと呼んだり、アドベントカレンダーをユールカレンダーと呼んだりすることもあります。
クリスマスツリーや飾りの特徴
クリスマスツリーはもみの木と決まっていると考える人が多いですが、ユールで使われていたのは同じく常緑樹の樫の木。
日本でもおなじみの木ですが、北欧では古くから命を象徴する木であり、魔除けとしても使われていました。
現代ではキリスト教の影響もあり、キリスト教の三位一体のような形に見えるなどの理由で、もみの木が一般的になっていったそうです。
現代の北欧でもクリスマスツリーはもみの木であることが多いのですが、他の国々と飾りのテイストが少々違います。
アメリカなどではカラフルで派手なクリスマスツリーを見かけますが、北欧は落ち着いた色合いで素朴な温かみが感じられます。
飾りつけも、ユールで使われていた伝統的なヒンメリと呼ばれる麦わらの飾りや松ぼっくりなどの自然由来のものが多いのも特徴です。
トムテ・ニッセ
北欧のクリスマスには、サンタクロースとトナカイのほかに「トムテ」 「ニッセ」といういたずら好きのお茶目な妖精が現れるのも特徴。
いつも家と子どもを見守る彼らは、クリスマスシーズンになるとサンタクロースのお手伝いをします。
ニッセの人形を家の至る所に飾るのも、クリスマスの楽しみのひとつです。
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各国別のクリスマスの過ごし方
全ての北欧諸国は、12月になると街がクリスマスに湧きたちます。
12月1日から25日までのアドベント期間は、言わばクリスマスの準備期間。
アドベントは飾りつけやプレゼント選びなど、クリスマスの準備に大忙し。
そしてクリスマスは家族で過ごすのが全ての国の共通点です。
しかし同じ北欧でも、クリスマスの過ごし方は国によって少し違うのだとか、、
スウェーデン
スウェーデンでも、来間素は家族と家で過ごすのが一般的。
12月になると、街のあちこちで「ユールマクナッッド」と呼ばれるクリスマスマーケットが開催され始めます。
クリスマスシーズン用の食材やデコレーション、ホットワイン、グロッグというナッツやレーズンの入ったお酒が並び、街はきらびやかに変身します。
スウェーデンのクリスマスシーズンで無視できないのが、ルシア祭。
12月13日に行われる伝統行事で、子どもたちが白いローブに身を包み、聖ルシアに扮して街を歩き、クリスマスの賛美歌を歌います。
クリスマスイブの15時からは、家族全員で「カレアンカ」と呼ばれるディズニーアニメを見る習慣があるのもスウェーデンならでは。
カレアンカとはドナルドダックのことで、1959年以来毎年この時期に国営放送で放送されています。
ディナーも豪華で、ユールボードと呼ばれるビュッフェスタイルが定番。
黒パン、えび、ソーセージやハム、ニシンの酢漬け、ポークリブ、アンチョビとジャガイモのグラタンなどが並びます。
フィンランド
フィンランドは、サンタクロースが住む国として世界中で有名です。
フィンランドでもクリスマスは家族と過ごすのが一般的。
家で過ごす家庭も多いですが、郊外のコテージなどを借りて過ごす人もいます。
フィンランドのクリスマスは、とにかく食卓がにぎやか。
オードブルにはさまざまなシーフードやキャセロール料理、ビーツサラダ、ハムにマスタードを添えたものなどが並び、メインディッシュの定番はローストポークです。
クリスマスイブの朝食にお粥を食べるのも、フィンランドの伝統行事。
プルーンジャムタルトやスパイスケーキ、クリスマスツリーの飾り用のジンジャーブレッドなど、スイーツも充実しています。
スウェーデン同様、ホットワインも欠かせません。
フィンランドではグロギと呼び、赤ワインにカルダモンやシナモン、クローブなどのスパイスで香りをつけ、レーズンやナッツを入れて楽しみます。もちろん、サウナの国らしく、クリスマスサウナを楽しむ人も多くいます。
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ノルウェー
ノルウェーでも、多くの人がクリスマスを家族と家で過ごします。
会社勤めの人は、「ユールボード」という日本で言う忘年会のようなイベントが行われ、ドレスアップして会社の人たちとレストランで食事を楽しみます。
会社が全額払ってくれるだけでなく、クリスマスボーナスがある会社もあります。
ノルウェーでは、11月頃から徐々にクリスマスムードになっていきます。
12月からのアドベント期間は他の北欧の国と同じように準備をしながら楽しく過ごします。
ノルウェーのクリスマスディナーは、毎年定番のメニュー。
地域や家庭によって多少の違いはありますが、24日のディナーは「リスグロット」というお米の料理を食べます。
米を牛乳と砂糖で炊き、シナモンとバターを入れたライスプディングのような料理で、クリスマスの定番です。
25日、26日は「リッベ」という分厚く大きな豚の三枚肉をオーブンで数時間じっくりと焼いた料理を食べます。
さらに、「ピンネショット」という塩漬けの羊肉に白樺の木で香りをつけ、蒸し焼きにした伝統料理も食卓に並びます。
デザートには、リスグロットに似た「リスクレム」。
炊いたご飯を牛乳と砂糖で煮込み、一度冷やしてホイップクリームと混ぜ、ブルーベリーソースとアーモンドをトッピングして食べます。
デンマーク
デンマークでも、クリスマスは家族とともに家で過ごすことが一般的です。
合理主義だと言われるデンマーク人らしく、事前にプレゼントの中身がわかっていたり、気に入らなければ後で返品交換できたりするのも当たり前です。
デンマークでは、他の国と同じような豪華なクリスマスディナーとは別に、友人や同僚と楽しむ「クーレフローガスト」というイベントが行われます。
クリスマスランチのことですが、ランチと言っても昼に食事をするわけではなく、日本の忘年会のようなイベントです。
家族で過ごすディナーでは、「フレスケスタイ」というローストポーク、りんごとプルーンを詰めた鴨の丸焼き、ソーセージなどを食べます。
クリスマスの食事に欠かせないのは、ジャガイモで作る蒸留酒「シナプス」。
ニシンの酢漬けと合わせて楽しむのがデンマーク流です。
デザートには、生クリームとさくらんぼのソースを添えたライスプディングが定番。中には砕いたアーモンドのほかに、一粒だけ丸のままのアーモンドが入っています。
誰が引き当てたか探り合い、当たった人にはプレゼントが贈られます。
まとめ
北欧のクリスマスでは、日本とはまた違った雰囲気を楽しめそうです。
きらびやかな街並みや豪華なクリスマスディナーなど、北欧ならではのユニークなクリスマスの世界に浸ってみたいですね。