世界最高の賞であるノーベル賞。
毎年12月10日にストックホルムとオスロで授賞式が行われ、世界中のあちこちで話題に上がります。
しかし、「ノーベル賞」という言葉を耳にしたことがあっても、一体どんな賞なのか?ノーベル賞にはどんな意味が込められているのか?良く知らないままの方もいるでしょう。
ノーベル賞とは?
ノーベル賞は、ダイナマイトの発明家、アルフレッド・ノーベル(1833〜1896)の遺言に基づき、1901年に創設された賞です。
現在のノーベル賞には、「物理学」、「化学」、「生理学・医学」、「文学」、「平和」、そして「経済学」の6つの賞があります。
各分野で3名まで選ばれ、これまでに900を超える個人と団体が受賞しています。
授賞式は、ノーベルの亡くなった日と同日である12月10日に行われ、受賞者には商品の小切手や賞状、メダルが贈呈されます。
次に、各賞の特徴について解説していきます。
ノーベル物理学賞
ノーベル物理学賞は、物理学に関する研究で大きく貢献した人に贈られる賞です。
1901年第1回の受賞者は、ヴィルヘルム・レントゲン。現在の医療に欠かせないX線を発見した人物です。
このX線は、骨折や体内異物などの診断、製品の品質を管理するのに役立っています。
その他には、放射能発見の業績を残したキュリー夫妻や、相対性理論を掲げて物理学の大きな土台を作り上げたアルベルト・アインシュタインが受賞しています。
ノーベル化学賞
ノーベル化学賞は、化学に関する研究で大きな発見や、より良くするための貢献を果たした人に贈られる賞です。
2019年には、リチウムイオン電池を開発した吉野彰さんが受賞しています。
この電池は、現代社会のIT機器に欠かせない技術であり、化石燃料を使わない社会への実現を可能にしてくれます。
近頃ノーベル化学賞は、対象範囲が広く、受賞対象となる研究の予想が難しい賞と言われています。
それは、化学が多くの人に使われる技術になっていることや、研究が幅広くなり、他の分野と密接になりやすいことが理由に上げられます。
ノーベル生理学・医学賞
ノーベル生理学・医学賞は、生理学および医学の分野で重要な発見をした人に贈られる賞です。
日本人第一号の受賞者は、1987年に受賞した利根川進さん。
体内に侵入したウィルスと闘う免疫の仕組みを研究しています。
利根川さんは、「抗体に関わる遺伝子が変化をして自分の体を守っている」という仕組みを明らかにし、「遺伝子は変化しない」という世界の常識を覆しました。
ノーベル文学賞
ノーベル文学賞は、文学の分野において優れた作品を創作した人に贈られる賞です。
ノーベルは発明家として立派な功績を残しましたが、文学に関しても高い関心を持っていました。
ノーベルの遺した言葉の通り、文学賞もノーベル賞の対象となりました。
ノーベル文学賞は、スウェーデン人が候補者を選びます。
そのため、選考の対象はスウェーデン語または英語に和訳されたものとなります。
ノーベル平和賞
ノーベル平和賞は、平和の促進や軍備の削減など、より良い方向へ尽力した人に贈られる賞です。
ノーベル平和賞のみ、ノルウェーの議会から選ばれた「ノーベル賞委員会」の5人が選考することになっています。
他の5つの賞は、ある程度の期間を得てから受賞されますが、ノーベル平和賞は、現在の活動が将来に渡って貢献できるものであることに期待して、賞が与えられることもあります。
ノーベル経済学賞
ノーベル経済学賞は、経済学上の優れた理論を作り上げた人に贈られる賞です。
ノーベル経済学賞は、スウェーデン国立銀行が設立300年を記念して、1969年から始まったもの。
そのため、厳密にはノーベル賞ではないと話す人もいるようです。
正式には、「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞」と言います。
選考には、スウェーデン王立科学アカデミーが関わっており、マクロ経済学やミクロ経済学、計量経済学、行動経済学などが受賞の対象となっています。
ノーベル賞の歴史
スウェーデンのストックホルムに本部があるノーベル財団が立ち上がったのは、1900年のことでした。
このノーベル財団が設立されたきっかけは、悲しい理由によるものだったそうです。
ノーベルが発明したダイナマイトは、戦争のない人々の豊かな暮らしを願って考えられたものでしたが、この技術は当時の戦争で利用され、世界に大きな影響力を及ぼします。
この事実を知ったノーベルは、亡くなる前年1895年に遺言を残しました。
そこには、「賞を与えるにあたり、候補者の国籍は一切考慮されてはならず、最もふさわしい人が受賞しなければならない」と記されていました。
ノーベルはヨーロッパ各地で戦争が勃発していた時代を過ごした人物です。
最後まで国際平和を願って、人々が暮らしやすい世界になることを望んでいたのでしょう。
そして、ノーベルの死後、1901年に授賞式が開催されました。
ノーベル賞は、残された遺産で運用しており、約120年もの間、途切れることなく続いています。
受賞者はどのように選ばれる?
ノーベル賞は、世界の平和と発展を願って作られたものだとわかりましたが、受賞者はどのような過程を得て選ばれるのでしょうか。
受賞候補者の推薦依頼状を送付、選考(前年9月~1月末)
初めに、毎年9月から過去の受賞者や選ばれた大学教授など、限られた人による推薦があります。
ここで各賞に300人ほど選ばれ、そこから各賞で最大3名まで絞られます。
候補者の絞り込み(2月~)
次に、委員会や委託された専門家による絞り込みが始まります。
選考ではそれぞれの賞で担当者が異なります。
物理学賞と化学賞、経済学賞は、「スウェーデン王立科学アカデミー」、生理学・医学賞は、「カロリンスカ研究所」、文学賞は、「スウェーデン・アカデミー」、平和賞は、「ノルウェー・ノーベル委員会」です。
受賞者の発表(10月中旬から下旬)
厳しい審査の末、投票による多数決で受賞者が決まります。
平和賞は、個人だけでなく団体で選ばれることもあります。
この時、選考についての情報はノーベル財団の方針により、50年間公開されないことになっています。
ストックホルムとオスロで授賞式(12月10日)
授賞式は、ノーベルの亡くなった日、12月10日に行われます。
また、1974年の取り決めで死亡した人には授与されないことになりました。受賞者が発表された10月以降に死亡した人には、賞が贈られます。
ノーベル賞を受賞した日本人は?
日本人の受賞者は、米国籍を含んで28人。
最近では、日本人の受賞ラッシュが続いていますが、そこにはどんな理由があるのでしょう。
それは、研究発表と受賞のタイムラグが関係していると言われています。
2021年には、気候変動の研究をした真鍋淑郎さんがノーベル物理学賞を受賞しています。
1958年に東京大学で博士課程を修了後、アメリカにて研究を続けてきたそうです。
成果が出るのは、長い年月がかかるということが分かりますね。
その他にも、1974年に「非核三原則」を唱えた佐藤栄作元首相が日本人初のノーベル平和賞受賞や、2015年にはニュートリノ振動の発見をした梶田隆章さんがノーベル物理学賞を受賞しています。
まとめ
今回は、ノーベル賞の基礎知識から種類、ノーベル賞が誕生した歴史まで解説していきました。
この記事を参考に、今年発表される受賞者にも注目してみてください。