キリスト教が生まれる前の時代から伝承されている北欧神話。
これは、当時のノース人の信仰に基づいて誕生した神話で、現代の北欧文化にもその影響が色濃く残っています。
この神話には、実に様々な架空の生き物や妖精が登場し、中でも無視できない存在がトロールでしょう。
怖いイメージもあるトロールですが、北欧のお土産の定番になっていたり、日本でもトロールをモチーフにしたキャラクターが存在したりと、実は身近な存在だったりします。
北欧の妖精ならこちらもCHECK
-
北欧の妖精、トムテ|言い伝えや性格、トムテが登場する物語を紹介
とんがり帽子とあごひげが特徴的な、北欧の妖精「トムテ」。現在ではクリスマスの代名詞として、サンタクロースを手伝う妖精とされていますが、かつては農家の納屋に住みつき、家や家畜を守ってくれる妖精と言い伝えられてきました。謎の多い妖精ですが、今回はトムテにまつわる言い伝えについて解説します。
続きを見る
妖精?モンスター?トロールとは一体?
(出典:en.wikipedia.org)
トロールとは、北欧に伝わる妖精の一種です。
北欧諸国の各地に伝わる、少し怖い妖精で、トロル、トロルド、トロールド、トラウ、トゥローなど、その呼び名も様々。
容姿についても、巨人であったり、毛むくじゃらだったり、角のあるもの、ずんぐりむっくりなお腹の出た体形のもの、時には赤毛の美人と言われることも。そのため、姿を自由に変えられる不思議な力を持つとも言われています。
一般的に怖いと考えられている理由に、トロールが悪意があって作物や森林地に危害を与えるという言い伝えがあります。
そんなトロールにも弱点があり、太陽に照らされると石に変わってしまうのだそう。
一方、良い妖精としての言い伝えもあり、気に入った家には富と幸運を授けるという説もあります。
国によってトロールの姿は違う?
本来のトロールは一体どんな姿をしているのでしょうか?
トロールの伝説がスカンジナビア諸国に伝わる中で、各国独自に発展したトロールの姿があるのも興味深い点です。
各国のトロールについて見てみましょう。
悪魔のようなフィンランドのトロール
フィンランドのトロールは池の中に棲んでおり、邪悪なシェートロールとして恐れられています。
普段は神秘的な石の力によって閉じ込められていますが、霧が出たり嵐になると、石の魔力が弱まり、人々の前に姿を現すようになります。
トロールに出くわすと、人間を池に引きずり込んで溺れさせてしまうと言われています。
そのため、フィンランドでは霧深い日や嵐の日には外に出ないようにする風習があります。
邪悪で不思議なスウェーデンのトロール
(出典:worthpoint.com)
スウェーデンのトロールは、「丘の人々」を意味する「ベルグフォルク」と呼ばれています。
その理由は、丘陵地、長塚、土墳などの下に共同体を作り、集団で暮らしていると考えられているためで、住居には財宝が溢れていて、夜になると光り輝くと言われています。
スウェーデンのトロールは、騒音や教会の鐘が苦手なので、人間の集まるところから離れて暮らしています。
出会った人間を気に入ると、富と幸運をもたらしますが、気に入らない人間には不運と破壊をもたらし、女子供をさらい、財宝を盗みます。
ココがポイント
さらわれないためには、人も動物もヤドリギの枝を身に着けると良いとされています。
また、不思議な力も持っており、金属工芸に秀で、薬草や魔法を使った治療にも秀でていると言われています。
太陽に当たると石に変わってしまうため、日が暮れてから明け方までにしか姿を見せません。
気まぐれで性悪なノルウェーのトロール
スウェーデン同様、ノルウェーのトロールも「ベルグフォルク」と呼ばれ、ほぼ同じように伝わっています。
毛むくじゃらで醜く気まぐれで、人に幸運をもたらすこともあれば、悪事を働いたりします。
そのためノルウェーにはトロールにまつわることわざがあり、日常生活でふと物がなくなったりする時に「トロールのいたずら」と言います。
デンマークのトロールはサンタクロース?
(出典:dent-sweden.com)
デンマークのトロールは、長くて白いあご髭があり、赤いとんがり帽子をかぶったおじいさんの姿をしていると言われています。
その姿はまるでサンタクロースのようです。
実は、北欧ではサンタクロースもトロールの家系ではないかと考えられることがあります。
サンタクロースというと、優しいイメージがありますが、デンマークのエブレトフトという地域に伝わるトロールは、少し怖い姿をしています。
他のデンマークのトロールと同じように、長い髭と赤いとんがり帽子のおじいさんではありますが、背中にこぶのある、大きな鉤鼻のオーグル(人喰い巨人)として恐れられる存在なのです。
邪悪で見た目も恐ろしいアイスランドのトロール
アイスランドのトロールは邪悪な巨人で、3人で一つの目玉を共有し、順番に使っています。
13人いるトロールは、クリスマスの13日前から一人ずつ現れ、13人揃ったところでクリスマスを祝うという言い伝えがあります。
それぞれが「焦げた鍋の底をさらう」、「窓からのぞき見をする」、「肉を盗む」などのユニークな名前を持っているのも面白いところ。クリスマス当日には、良い子にはプレゼントを届け、悪い子はどこかへ連れ去ってしまうと言われています。
絶景の島フェロー諸島にもユニークなトロールがいる
原始の地形を残した絶景で人気の観光スポットであるフェロー諸島のトロールは、他とは少し違うユニークな存在。
フォッデン・スケマエンドと呼ばれ、「うつろな人々」、「地下の人々」だと考えられています。
フェロー諸島のトロールも恐ろしい存在で、人をさらって何年も捕らえておくと言われています。
フェロー諸島には、トロールの指と呼ばれる岸壁の絶景スポットもあり、土地に根付くトロールの存在感を感じます。
出典:https://guidetofaroeislands.fo/
実はたくさん!トロールをモデルにしたキャラクターたち
北欧に伝わる妖精のトロールですが、実は世界中に知られているトロールをモデルにしたキャラクターがたくさんいます。
あれもこれもトロールだったなんて、驚きのキャラクターばかりです。
ムーミン
【 #ムーミンキャラクター紹介 】 #ムーミントロール は好奇心旺盛で優しいムーミン族の男の子。体は柔らかな白い毛で覆われていますが、お腹が弱く、泳ぐときには水着を着ることも。 ムーミンたちがカバでも妖精でもないって、ご存知でしたか? じゃあ何!?と思った方は⇒https://t.co/AxzFkU0aSq pic.twitter.com/s277Smy7h9
— ムーミン公式 (@moomin_jp) March 16, 2023
日本でも人気のムーミンは、原書ではムーミントロールと表記されています。
ただ、原作者のトーベ・ヤンソンによると、ムーミンは北欧に伝わるトロールではなく、トロールという名前の別の妖精だとされています。
北欧のトロールにヒントを得た、別の妖精なのでしょう。
トトロ
「となりのトトロ」に登場するトトロも、トロールがモデルなのではないかと言われているキャラクターの一つ。
しかし、作中で登場人物のサツキが「トロールのこと?」と妹のメイに聞いたところ、メイはトロールではないと否定しています。
トトロはトロールではなさそうですが、もしかしたら北欧のトロールにヒントを得たキャラクターなのかもしれません。
アナ雪に登場するトロール
「アナと雪の女王」に登場するトロールは、普段は岩に擬態するという設定が、北欧のトロールそのものです。
ただ、北欧のトロールのほとんどが巨人とされる一方、「アナと雪の女王」のトロールは小人という設定になっています。
「ロード・オブ・ザ・リング」のトロール
「ロード・オブ・ザ・リング」としても知られる名作、指輪物語にもトロールが登場します。
普通の武器ではダメージを与えられないほど堅い皮膚を持っていますが、太陽に当たると石になってしまう点が、北欧のトロールと同じです。
「ハリー・ポッター」シリーズにも登場
Where do trolls come from? Why do they have such bad reputations? Here's a handy Pottermore guide: https://t.co/EdV9ElWKuS pic.twitter.com/pK2evKNm70
— Wizarding World (@wizardingworld) August 22, 2017
「ハリー・ポッター」にもトロールが登場します。
このトロールは、巨漢の一種族で、悪臭を放つとされています。
トロールがたくさん登場する「ドラゴンクエスト」シリーズ
日本が誇るゲームタイトルである、「ドラゴンクエスト」シリーズには、実に様々なトロールが登場します。
どれも毛皮を羽織って棍棒を持つ、大柄で獰猛、凶悪な見た目のモンスターです。
まとめ
伝説の妖精であるトロール。現在の北欧文化にも欠かせない不思議な存在です。