健康に良いことで、近年世界でも注目されている発酵食品。
日本にも味噌や納豆など、さまざまな発酵食品があり、世界ではチーズやヨーグルトなどがよく知られています。
しかし、体に良いとはわかっていても、発酵食品独特のニオイが苦手という人も多くいます。
そんな、世界が注目する発酵食品。
中でも、世界一臭いと言われる発酵食品が北欧にあるのをご存じでしょうか?
「シュールストレミング」とは
シュールストレミングとは、塩漬けにしたニシンを発酵させて缶詰にした、スウェーデン生まれの食べ物です。
元々は、スウェーデンの長い冬を乗り切るため、大量に獲れたニシンを保存する方法としてつくられました。
発酵した塩漬けニシンは14世紀頃からスウェーデンで食べられており、17世紀にはスウェーデン軍の食糧としても重宝されてきました。
当時の北欧では塩は貴重なものだったため、少量で保存ができるようにニシンを塩水に漬けたことが始まりだと言われています。
シュールストレミングはなぜ臭いのか
シュールストレミングは、世界一臭いと言われるほど、強烈なニオイで有名です。
そのニオイは、
「犬が嘔吐するほどの悪臭」
「臭すぎて死体の匂いかと思った」
「化学兵器と誤解されたことがある」
などと形容され、日本でも「クサヤの6倍のニオイ」、「気絶するようなニオイ」と言う人もいます。
その強烈なニオイの原因は、缶詰の中でも発酵が進むことにあります。
日本では、缶詰は加熱殺菌しなければならないと法律で決められていますが、シュールストレミングは加熱殺菌されていません。
そのため、缶の中で生き続けている発酵微生物によって、どんどん発酵が進んでいきます。
その結果、微生物の分解によって缶が膨れ上がるほど大量に臭気物質が生成され続け、シュールストレミングの独特の悪臭がつくられていくのです。
シュールストレミングはどうやってつくる?
スウェーデンの伝統的な保存食であるシュールストレミングの作り方は、本来とてもシンプルなものです。
まずは、ニシンの頭とはらわたを取り除き、濃度の高い塩水に1~2日浸して血を抜きます。
その後、血が流れ出た塩水を捨て、今度は塩分濃度が低めの塩水に漬けて蓋をします。
そのまま3週間ほど経つと、蓋の下に発酵によって泡が立ち始めます。
ここから8週間ほど発酵させ続け、味見をして缶詰にします。
これがシュールストレミングができ上がるまでの工程ですが、缶詰を開けるまで、どんどん発酵が進んでいくことになります。
シュールストレミングは夏の食べ物
長い冬を乗り越える保存食として生まれたシュールストレミングですが、毎年8月の第3木曜日に解禁される夏の食べ物です。
8月と言っても、下旬になるとスウェーデンでは秋への移り変わりを感じる季節。
夏の終わりを名残惜しむように、シュールストレミングパーティーを開いて家族や友人と大勢で集まって食べるのがこの季節の習わしとなっています。
開け方に注意!
シュールストレミングの缶詰を開けるときには注意が必要です。
シュールストレミングはニオイが強烈なため、屋外で開封するように但し書きがあるものが多くあります。
特に、発酵が進んで缶詰がパンパンに膨れ上がっているものは慎重に開けないと、中の臭い汁やニシンが飛び散ってしまいます。
シュールストレミングを開ける際には、缶詰をビニール袋に入れて開けるのがポイント。
缶に切れ目を入れると中の汁が噴出し、これが服などにつくとニオイが取れません。
ビニール袋に缶詰と缶切りを入れ、袋の口を縛って袋の上から缶切りを使うと汁が飛び散るのを防げます。
また、シュールストレミングの味は、とても塩辛いため、塩辛さを軽減させるために水の中で缶詰を開ける人もいます。
シュールストレミングの正しい食べ方
ニオイが強いというだけで、やや抵抗感を感じるシュールストレミングですが、おいしく食べる方法があります。
スウェーデンの人にとっては、伝統食であり、ソウルフード。
シュールストレミングの正しい食べ方をご紹介します。
シュールストレミングは付け合わせが欠かせない
夏の終わりを惜しみながら開かれる、シュールストレミングパーティーでは、付け合わせにじゃがいも、サワークリーム、刻んだタマネギが欠かせません。
シュールストレミングは塩気が強いアンチョビのような味わいで、魚についた汁気を拭き取ることでニオイが軽減し、食べやすくなります。
それを、北欧でよく食べられる黒パンやクラッカーに乗せ、サワークリームや刻んだタマネギをトッピングするとさらに食べやすく、おいしく食べられます。
また、バターやチーズ、オリーブオイルなども相性がよく、トマトなどをトッピングすると、よりさっぱりと食べられるのでおすすめです。
シュールストレミングはお酒と楽しむ
シュールストレミングパーティーに欠かせないのが、アクアビットと呼ばれるアルコール度数の高い蒸留酒。
塩辛いシュールストレミングと相性がよく、大人はアクアビットを楽しむためにシュールストレミングを食べると言っても過言ではありません。
また、ニオイが気になるときにアクアビットなどの強いお酒で洗ってから食べる方法があります。
アルコールで洗うことでニオイが抑えられ、食べやすくなるのでおすすめです。
アレンジもいろいろ
さまざまな付け合わせとともにそのまま食べるのも良いですが、シンプルな塩漬けなだけにアレンジを幅広く楽しめるのもシュールストレミングの魅力です。
ここでは、シュールストレミングのアレンジ料理をいくつかご紹介します。
シュールストレミングの握り寿司
酢飯を用意して、シュールストレミングを乗せた握り寿司です。
シャリで塩辛さはやや抑えられるものの、ニオイがあるので、わさびを多めにしたり、ガリと一緒に食べるのがおすすめ。
まだ塩気やニオイが気になるようであれば、水やお酒で洗うと食べやすくなります。
酢飯なしでも、シンプルにわさび醤油だけでもおいしく食べられます。
シュールストレミングのブリトー
(出典:surstromming.com)
シュールストレミングをトルティーヤで巻いてブリトーにする食べ方です。
具材は、茹でたじゃがいも、刻んだタマネギ、クリームチーズなどがおすすめ。
味付けは塩コショウやマヨネーズ、お好みでレモンなどを絞ってもおいしく食べられます。
ディルやタイムなどのハーブを添えると、臭みも抑えられて食べやすくなります。
他にも、好みの具材をいろいろ試してみるのも楽しいでしょう。アレンジの幅が広がる食べ方です。
臭みを消すならアヒージョ
マッシュルームやエビなど、好きな具材をニンニクや唐辛子と一緒にオリーブオイルで煮込むアヒージョなら、臭みをかなり消すことができます。
シュールストレミングを細かく切って入れることで、具材に旨みが染み込み、おいしく食べられます。余った野菜など具材も何でも良いので手軽につくれるのも魅力。
とにかく臭みを消したいときにおすすめの食べ方です。
まとめ
シュールストレミングはスウェーデンの伝統食です。気圧で破裂してしまう可能性があるため、航空機への持ち込みは禁止されていますが、日本でもネットなどで手に入ります。
興味があればぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか?
一度はチャレンジしてみる価値のある食べ物です。
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