「幻日環(げんじつかん)」という言葉を聞いたこと、もしくは実際に目にしたことがありますか?
2017年、スウェーデンのベムダレンというところのスキー場で、幻想的な幻日環が観察されたニュースが有名です。
まるで太陽がたくさんあるような不思議な現象で、近年では2022年にもスウェーデンで観察され、「5つの太陽」が出現したと話題となりました。
同じく2022年には、日本でも関東北部や東北南部太平洋側で幻日環が観察されています。
幻日環とは
幻日環とは、天頂を中心として太陽を通る光の輪が見られる大気光学現象です。
完全な輪になった状態のものはとてもめずらしく、ほとんどの場合は太陽付近だけの弧として観察されます。
「幻日」というのは、大気中に含まれる氷の結晶が光を屈折させることでできる大気光学現象を指します。
本物の太陽と同じ高さの場所に、太陽に似た小さな光がうっすらと幻のように浮かび上がることから「幻日」と呼ばれるようになりました。
このような現象は、南極をはじめとした極寒の地で多く見られます。
よく幻日環は大地震の前触れと言われますが、科学的に因果関係はありません。
そのように言われるのは、それだけめずらしい自然現象だということでしょう。
ココがポイント
実際、観測時間は非常に短く、発生頻度も年に1度起こるか起こらないか程度で、非常に稀な現象として知られます。
幻日環とハロの違い
幻日環が太陽の両サイドに現れる幻日をつなぐ白い光のラインであるのに対し、「ハロ」とは太陽の周りに現れる光の輪を指します。
つまり、ハロは太陽の周りを囲むようにできる光の輪を指し、幻日は太陽の周りではなく、両サイドに現れるものを指します。
さらに詳しく
幻日は必ずしも両サイドに現れるわけではなく、左右どちらかの場合もあります。
幻日環を生み出す幻日のメカニズム
幻日をつなぐ光の輪である幻日環。
幻日の発生条件の1つに、大気中に含まれる氷の結晶(氷晶)の形状があります。
目に見えないほどの小さな氷の結晶は、実は常に大気中を漂っています。
幻日が発生する時、氷の結晶は六角形の柱状になっていることが特徴です。
この六角柱を太陽が照らし、太陽の光が屈折することで幻日が起こるのです。
ただし、幻日が起こる条件として太陽の高さがあります。
太陽の高度が高すぎても低すぎても幻日は発生せず、絶妙な高さでなければなりません。
そこに、大気中の氷の結晶の量なども関わってきます。
これらの条件が全て重なった時、はじめて幻日が生まれるのです。
そして、この幻日が生まれた時、空に雲が広がっていることで幻日環が発生することがあります。
雲の中にある氷の結晶に太陽の光が反射、屈折することで幻日環ができるのです。
他にも幻日に似ためずらしい現象がある
幻日の中でも幻日環はとてもめずらしい現象です。
その他にも、めずらしい大気光学現象があるので、いくつかご紹介します。
120度幻日
(出典:butterflyandsky.fan.coocan.jp)
幻日環よりも発生頻度が少なく、とてもめずらしいのが120度幻日。
1~2年に一度発生するかしないか程度にしか発生せず、発生したとしてもなかなか確認することができません。
120度幻日とは、太陽と同じ高度で、さらに太陽からの方位角で120度離れた場所に見える小さな発光のことを言います。
環天頂アーク
(出典:weathernews.jp)
高い高度で、太陽の真上に下方に弓なりになった虹色現象が、環天頂アークです。
逆さまの虹のような形をしているので、逆さ虹とも呼ばれます。
これは、太陽の光が上層の巻雲や巻層雲などの氷の粒によって屈折することで現れる現象です。
普通の虹と違うのは、虹は大気中の水滴によって発生するのに対し、環天頂アークは幻日同様氷の粒によって引き起こされます。
太陽高度が高すぎても見えなくなり、とてもめずらしい現象です。
日の出後の早朝から、夕方の日の入り前の間しか見ることができません。
環水平アーク
(出典:weathernews.jp)
環水平アークは、太陽の真下に現れる虹。
太陽の高さが高い季節にしか見ることができません。
そのため、日本では3月~9月頃のお昼頃にしか見ることができませんが、環天頂アークに比べると比較的確認しやすい現象です。
環水平アークも、環天頂アークと同様氷の粒によって引き起こされます。
ラテラルアーク
(出典:weathernews.jp)
ハロよりもさらに太陽から離れた位置に現れる虹色現象が、ラテラルアーク。
太陽よりも上に見られるものを「上部ラテラルアーク」と言い、太陽よりも下のものを「下部ラテラルアーク」と呼びます。
これらも大気中の氷の粒によって引き起こされる現象で、1年に1度発生するかどうかというレアな大気現象です。
映日
(出典:camerapocket.com)
映日は、幻日と同じように風が比較的弱い日に氷の粒が同じ向きになることで、太陽の真下に帯状の光が現れる現象です。
メカニズムは幻日とほぼ同じですが、山の上や飛行機の上など、標高の高い場所で見られることが多い現象です。
映幻日
(出典:Wikipedia)
映幻日は、これまでにご紹介した大気光学現象の中でも非常に稀な現象と言えます。
幻日が太陽に対して現れるのと同じように、映日に対して現れる幻日を映幻日と言います。
タンジェントアーク・パリーアーク
(出典:weathernews.jp)
タンジェントアークは、内暈に接する太陽の上下に帯状の虹が現れる現象です。
太陽の高さによって大きく形が変わるのが特徴で、太陽が高い時には内暈の上下に重なる楕円状になり、「外接ハロ」と呼ばれます。
パリーアークは、タンジェントアークのすぐ上に現れる弧状の虹です。
パリーアークとタンジェントアークはほとんどの場合で同時に現れるのですが、1年に1回程度か数年に1回程度しか見られないとてもめずらしい現象です。
いつどこで幻日環を見られるの?
(出典:weathernews.jp)
幻日環は、太陽高度や氷の結晶などの条件さえ揃えば場所を問わず発生します。
国内でも北海道から九州までの広い範囲で観測されています。
2015年の10月頃には東京都内でも幻日が観測されたことがありました。
フィンランド
(出典:imgur.com)
2013年、フィンランドでは4種類の幻日現象が全て同時に発生するという非常にめずらしい現象が起こりました。
左右対称に光が見える幻日、空を横切る光の輪である幻日環、幻日環上に輝く120度幻日、逆さまの虹である環天頂アークが一斉にフィンランドの空に現れたのです。
中国
(出典:shvoice.com)
2022年11月、内モンゴル自治区フルンボイル市で幻日が観測されました。
太陽が3つ同時に見える不思議な現象で、ネット上でも話題に。
フルンボイル市で観測された幻日は、約5時間発生し、現地では幻日の後に災害が起こったとされる言い伝えがあることから不吉な予兆と噂されていました。
アメリカ
(出典:mononoke-report.blogspot.com)
2019年には、アメリカ・ミシガン州のさまざまな場所で幻日が観測されました。
太陽の両サイドに2つの太陽があるような幻想的な景観だったようです。
チリ
(出典:earthreview.net)
2017年、チリ北部のアントファガスタという街で、さまざまな大気光学現象が同時に現れるというめずらしい現象がありました。
幻日と、ハロの中にハロが3重に重なるなど、とてもめずらしい不思議な光景だったと言います。
まとめ
こうして世界での事例などを見てみると、実は数多く幻日環やハロなどの大気光学現象が各地で観測されていることがわかります。
日本でも事例の報告が多く、都内でも観測されています。
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