「フォルケホイスコーレ」という言葉をご存じでしょうか?
これは、通称ホイスコーレとも呼ばれ、デンマークをはじめとした北欧を中心に行われている成人教育を意味します。
安い費用で留学できる点や、幅広くさまざまな分野を学べる点から、日本でも注目されています。
フォルケホイスコーレの発祥は?
フォルケホイスコーレはデンマークで生まれた独自の教育制度です。
19世紀半ばに、神学者であり歴史家だった「N.F.S.グルントヴィ」によって提唱され以来170年以上続き、歴史、文化、伝統を継承しています。
発祥はデンマークですが、現在ではスウェーデン、ノルウェー、フィンランドなどの北欧諸国に広まり、日本でも注目されるようになっています。
フォルケホイスコーレの目的
現在デンマークに70校ほどあるフォルケホイスコーレは、デンマーク文化庁の監督のもと、フォルケホイスコーレ法という法律に従うことを義務付けられています。
フォルケホイスコーレの目的は、実益を追求するものではありません。
「人生が豊かになること」、「生きるモチベーションを手に入れる」、「他者を考慮した自己実現の道を見つける」などと表現されています。
このフォルケホイスコーレ法で定義されているフォルケホイスコーレの目的をご紹介します。
生きた啓蒙(Life enlightenment)
生きた啓蒙とは、全人類にとって普遍的に共通する課題の一つを意味します。
これは、独立した教育機関の長い伝統に根差したもので、人生における課題をテーマとしています。
各教育機関が選択した基本価値に基づき、フォルケホイスコーレの本質的な存在目的を表すものです。
人々の啓蒙(Public enlightenment)
大小の規模に関わらず、コミュニティとそれが個人に与える影響に関する啓蒙を意味し、公式ではない成人教育と言い換えることができます。
個人とコミュニティは表裏一体であり、お互いに欠かせない関係にあるというものです。
フォルケホイスコーレの提唱者であるN.F.S.グルントヴィも、生きた言葉による対話と共生を大切にすることを重要としています。
民主主義教育(Democratic education and training)
フォルケホイスコーレの果たすべき役割は「その情熱と能力によって、民主主義社会に積極的に関与する国民となるよう教育すること」とされています。
そのため、教授されるテーマとコースの構成は、この役割に則った形でなければなりません。
また、フォルケホイスコーレで学ぶ内容は、包括的に多くの人々の本質に関わることでなければならないとされています。
各教育機関はこれらの目的を、それぞれ独自の方法で実現し、ユニークな価値を生み出しています。
フォルケホイスコーレ法に準じている限り、教育機関の運営や管理、教育方法など全てが各校の自由裁量とされています。
フォルケホイスコーレの特徴
フォルケホイスコーレには、試験や成績というものは一切なく、学校によってテーマや構成、教育方法も異なります。
民主主義的思考を育てる場であること、知の欲求を満たす場であることが、フォルケホイスコーレの定義と言えます。生涯学習とも言えるフォルケホイスコーレの特徴を、もう少し詳しくみて見ましょう。
教科はバラエティ豊かだが、試験も成績も問われない
フォルケホイスコーレに入学するために、特別な資格や入学試験は必要ありません。
入学してからも、試験や成績は一切ないのです。
学ぶ内容もさまざまで、歴史や文学、心理学、グラフィックデザイン、IT、音楽、スポーツ、演劇、環境、教育、ダンス、絵画、哲学、政治学、国際文化、写真など、多岐にわたります。
学校によって力を入れている分野は異なりますが、試験も成績もないというルールは共通で守られています。
学校で学んだことを他人から評価されることが重要なのではなく、本人が何を学び、何に活かせるのかにフォーカスした教育なのです。
また、外国人留学生のために、デンマーク語やデンマークの文化を学ぶコースがある学校もあります。
17歳半以上であれば誰でも入学可能な、自分を見つけ出す場所
デンマーク流の民主主義を追求する国民学校フォルケホイスコーレには、17.5歳以上であれば誰でも入学することができます。
デンマーク独自の教育機関でありながら、国籍が問われることもありません。
他国から学生を受け入れているフォルケホイスコーレを見ると、在校生の年齢も国籍も入学理由も多種多様です。
高校卒業後、大学へ進学する前にどんな分野に興味があるのか、自分の人生を豊かにする分野は何なのかを見つけたい人や、転職のタイミングで職種を変更し、新しいことにチャレンジしたい人などが集まります。
対話を大切に、共に学んで暮らす場所
フォルケホイスコーレは全寮制で、年齢や国籍を問わず生徒教師を含めた学校に関わる全ての人々が同じ学校で暮らし、同じ時間を過ごします。
学校生活の中での対話を通じて、自分が何者であるのか自分を見つけ出し、多様な他者とのつながりによって社会が成り立っていることを体験します。
その先に、自分が生きる社会にどのように関わっていきたいか、民主主義社会の一員として自分に何ができるのかを考えるようになります。
フォルケホイスコーレでの学びを通じて一人一人の個性が育てられ、社会に活かされていくのです。
ディスカッション中心のコミュニケーションを重視した学びの場所
フォルケホイスコーレでは、とにかく他者との会話が重視され、ディスカッション中心の授業が古くから続いています。
特定のトピックについての対話、何気ない談話や会話を通じ、生徒は多種多様な意見をまとめる民主主義的解決の方法を自然と身につけていきます。
授業で他者と協力して進めるプロジェクトや、朝礼、リビンググループと呼ばれる生徒同士の集まりまで、常に他者との会話、コミュニケーションを大切にします。
何かを決める際にも、言いたいことがある人が全て意見を言い終えるまで、途中で打ち切られることもありません。
デンマーク人の同じ場所にいる全ての人が話し合いに参加できる雰囲気づくりのうまさは、フォルケホイスコーレのおかげなのかもしれません。
日本からフォルケホイスコーレに留学できる?ビザや費用は?
入学する人の国籍はフォルケホイスコーレでは問われないため、日本から留学することも可能です。
気になる費用やビザについて解説します。
就学期間によってはビザが必要
フォルケホイスコーレのコースはさまざまで、就学期間も学校やコースによって異なります。
基本的には長くても10ヶ月ほどで、4ヶ月のコースや半年のコースなどもあります。
日本からフォルケホイスコーレに留学するのには、就学期間によってはビザが必要です。
日本国籍を持っている場合には、最大90日以内までビザなしでデンマークに滞在できます。
90日以上のコースを希望する場合には、学生ビザの取得が必要です。
1年間滞在できるワーキングホリデービザについては、受け入れ不可の学校もあるので事前に確認しましょう。
フォルケホイスコーレ留学にはどのくらい費用がかかる?
物価が高いことで知られる北欧でも、フォルケホイスコーレはデンマーク政府から補助金が出ていることもあり、留学費用を抑えることができます。
登録料が3万円~5万円ほど、授業料や食費、滞在費込みで月10万円~15万円ほどで留学することができるのです。
その他、往復の渡航費がだいたい7万円~20万円ほど、必要に応じて海外旅行保険や自由に使えるお金が必要になります。
一部学校によっては、シングルルームに追加料金が必要だったり、部屋代が別途かかる場合もあるため事前に確認が必要です。
まとめ
もしフォルケホイスコーレを受講する機会があったら、人生や社会への関わり方に対する考えが大きく変わるかもしれません。
年齢も国籍も関係なく、どんな人にも学びの機会が開かれているので、一度人生を考え直してみたい時に参加してみるのも良いでしょう。
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